マルチホップVPNチェーン (ダブルVPN)

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2022年5月30日

 

「テロ組織から暗号化されたメッセージが届きました!」

「どこから送られてきたのか、調べてくれ」

「一度にいろんな場所から送られているようです」

「そんなばかな!」

アクション映画にありそうなスリリングな場面、こんなシーンを一度は見たことがあるのではないでしょうか。悪役の信号を追跡しようとしても、地球上のあちこちに次々と移動して、実際どこにいるのか特定することができません。もし、その悪役になってみたいならば、やり方をお教えします。チェーンVPNとかダブルVPNとも呼ばれる、マルチホップVPN接続が、その驚きの方法です。

 

 

通常のVPN接続では、VPNサーバーは、インターネットから、インターネットユーザーのデバイスを保護するバリアとして機能します。マルチホップVPNチェーンでは、デバイスや(と)VPNが追加されることで、接続が飛躍的に複雑になり、追跡はさらに困難になります。 たとえば、米国で接続した通信は、最終的に目的地に到達する前に、スウェーデン、メキシコ、アイスランドを経由するかもしれません。複数の組み合わせが可能です。

ダブルVPN (同じVPNプロバイダ)

デバイスはまずひとつ目のVPNサーバーに接続され、さらに同じVPNプロバイダーが所有するふたつ目のVPNサーバーに接続されます(従来の「ダブルVPN」です)。 この種のサービスは設定が最もシンプルで、複数のVPNプロバイダで提供されているサービスです。最もよく知られ、かつ料金もいちばん手頃なのはNordVPN AirVPNです。お使いのVPNのインターフェースで適切なオプションをクリックし、組み合わせを選択(選択肢があれば)するだけで、ユーザーは2台のサーバーの背後に隠れることができます。

この機能は、ときに「マーケティングのトリック」と批判されてきました。ひとつのVPNサービスが所有する2台のVPNサーバーを使うということは、設定、プロトコル、ログ(ある場合)や場合によっては場所さえも同じであるためです。ようするに、この設定は間違いなくクールですが、それほど大きな利点はないかもしれないということです。

利点を挙げるとすれば、通常ダブルVPNを利用すると接続速度が急激に低下しますが、この方法だとスピード低下をほぼ避けられる可能性があります。つまり、ダブルVPNを利用しつつ、コンテンツのストリーミングやビデオの視聴ができるということです。

四重(Quadruple)VPN(同じプロバイダ)

設定が簡単なマルチホップVPNでは、Perfect Privacy VPNが断然ナンバーワンです。カスタム構成を作成して、設定の異なるVPNサーバーを最大4台まで連続して接続することができます。さらに、IPv6に完全に対応していることも利点です。Zorro VPNもこの機能をサポートするプロバイダですが、月額料金はかなり高価です。

ダブルVPN (異なるプロバイダ)

この方法では、まず仮想マシン(VM)をインストールしたデバイスを通常通りVPNに接続し、その仮想マシンから別のVPNに二重に接続します。仮想マシンからのインターネット通信は、複数のVPNを経由してルーティングされるため、さらにレベルの高いセキュリティ対策が可能です。仮想マシンには無料のLinux OSを使用することができます。さらにレベルの高い匿名を目指すなら、Tails OS(ポータブルLinux OS)を利用すれば究極の匿名性を得ることができます。仮想マシンのもうひとつの利点は、ブラウザ・フィンガープリントが変化し続けるため、ブラウザを利用した追跡が不可能なことです。

無限の彼方へ、さあ行くぞ!

この方法だと理論上、接続できるVPNの数は無限です。VPNサーバーと仮想マシンを組み合わせれば、例えば最初のデバイスでVPN接続し、仮想マシンで次のVPNに接続して地球上のどこかにある2台目のマシンにリモート接続し、そのマシンがさらにVPNに接続し、仮想マシンはまた他のデバイスに接続する、などというワイルドなことだって可能です。

しかし実際には、こうした方法は、実現不可能なアクション映画のファンタジーの世界のものです。その理由は以下です。

チェーンを追加するたびに、接続速度は急激に低下します。テスト結果によれば、ひとつのプロバイダを使用したダブル VPN設定では速度が20%低下します。これはそれほど悪い結果ではありません。しかし、仮想マシンで2つの異なるVPNを使用するダブルVPNだと、速度はなんと80%も低下するのです!接続を増やせば増やすほど速度は劇的に落ちていきます。これでは笑う気にもなれません。いずれにしても、ビデオ視聴やコンテンツのストリーミングはあきらめるしかありません。複雑なチェーンを設定すれば、画像などのコンテンツが多いウェブサイトを閲覧するだけでも、ひどい目にあいます。

複数のVPNサービスに加入するのに、高いコストがかかります。VPNの月額料金は3ドルから12ドルですが、複数のVPNを利用すれば匿名性を保護するためのコストは結局高くつきます。また当然のことですが、通常無料VPNサービスはこうした複雑な設定に対応していません。さらに悪いことには、無料VPNでは個人情報の漏洩の危険があり、そもそもマルチホップVPNチェーンを利用する意味がなくなります。

異なるVPNの追加によるセキュリティ上メリットはごくわずかです。高品質なVPN(強固なログなしポリシーを持つ)をひとつ使うだけで、すでに通信傍受に対して強力な防御ができます。複数のVPNを連続して使用することによって得られる利点があったとしても、そもそもVPNを使用する利点自体が相殺されてしまうのです。

複数のVPNを構成するのに夢中になっている間に、はるかに簡単な方法でセキュリティが侵害されてしまうかもしれません。IP流出、接続不良のキルスイッチ、悪質なVPNによる悪意のあるデータのログ記録、ブラウザキャッシュの悪用、さらに疑わしいアプリケーションや添付ファイルのダウンロードなど、匿名性を脅かす危険¡はほかにも数多くあります。マルチホップVPNチェーンは、しっかりとセキュリティ対策をした上で、補助的に利用すべきです。マルチホップVPNチェーンにお金をかける前に、まずは基本のセキュリティ対策を万全にしましょう。